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第一章・2

「こんにちは」  男子高校生は短くそう言い、会釈してそのまま歩き去って行った。    え?  それだけ?  まさか、俺のこと知らないの?  颯真は振り向いて彼の後を追おうとしたが、黄色い歓声に阻まれた。 「うそー! 五条颯真!」 「きゃ~!」 「どうしよ。どうしよう!」  数人の女子高校生が、こちらに駆けてくる。  この流れでは、彼女らの相手を務めた方が良策だ。 「こんにちは」  颯真は、爽やかな営業スマイルで彼女らに挨拶した。

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