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第七章・2

「お待たせしました。ブレンドです」 「僕は紅茶を頼んだはずだけど?」  え? と、スタッフの顔が困惑する。 「しかし、伝票にはちゃんと」 「僕は今、紅茶が飲みたい気分なんだよ!」  客の荒げた声に、周囲が静まり返る。  郁実は急いでカウンターから出て、現場へ向かった。 「お客様、いかがなさいましたか?」 「紅茶! 紅茶を頼んだんだよ、僕は!」  スタッフの眼を見ると、それは違うと訴えている。  しかし、仕方がない。  お客様が黒と言えば、白も黒なのだ。

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