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第九章・12

「皆さん、ご心配おかけしました!」    事故から3ヶ月。  喫茶店に復帰した郁実を、スタッフが拍手で温かく迎えた。 「やっぱり店長がいると、店の雰囲気が良くなりますね」 「癒される~、って感じ!」  違いない、と皆で頷き合い、郁実の復帰を喜んだ。  久しぶりに店内に入った時は、記憶にあった父の喫茶店と全く違う内装に驚いた郁実。  だが、徐々に慣らしていった。  父の死を受け止め、自分の店を動かす心の準備を整えていった。  スタッフの顔と名前も、改めて覚えなおした。  そして、今日復帰したのだ。 「おめでとう」 「颯真さん!」  颯真が、美しい蘭の鉢植えを持ってやって来た。

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