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 俺の嘆願により、先生は洋服を着たまましてくれることになった。  その条件として、いま俺は、ワイシャツのボタンを全開、スラックスもベルトをくつろげて半脱げの状態で寝転がされている。 「あー。ゾクゾクする眺めだ」 「俺も、すごいドキドキします」  先生は、俺の素肌をなでながら、上半身のあちこちに吸い付いてきた。  たまらず身をよじる。  先生の頭がだんだん降りてきて、下着がずらされると、既に固くなったものが露わになった。  あーんと口を開ける先生を、慌てて止める。 「お風呂入ってないから」  しかし、聞き入れてもらえない。 「ん……大河の味」 「はあ、んっ、ん……っぁ」  我慢しようとしても、ひとりでに声が漏れてしまう。  丹念にねぶられたあとは、後ろをほぐされる。  スラックスが足の途中に引っ掛かったままだけど、先生は、「このままで」と言った。 「ぅあ……せんせ、気持ちいい。興奮する」 「素直で可愛らしいね」 「ん、先生の早く欲しいです」 「まだダメだよ」 「ぁっ、ん……はぁ、んン。早く」  日も暮れる前に、服を乱したまま、性急なセックス。  なんてことをしているんだろうと思ったら、ぶわっと熱がせり上がってきて、先生のペニスが入ってきて1分も経たずに達してしまった。  夕食を終えてまったりしていると、佐々木さんから、きょうはありがとうという言葉と共に、3枚の写真が送られてきた。  件の怪文書だ。  画像を見て、思わず顔をしかめた。  そして、無言のまま先生にスマホを手渡す。 「ふーん」 「この内容じゃ、親には相談しにくいかもしれませんね。かといって、警察に行くほどでもないですし」  A4の紙に、パソコンで打った文字。どれも、10行ずつくらい。  内容は、『屈強な僕を好きになってくれると信じています』とか『気配り上手な紳士は僕の他にいないと思います』とか『僕は一生あなたを笑わせて楽しませます』とか……まあ、要するに、めちゃくちゃ重い。 「本気でラブレターのつもりで書いてるなら絶望的にセンスがないですし、嫌がらせだとしたら発想が気持ち悪すぎます」  先生は呆れすぎたのか、黙って日本酒に口をつけている。 「でも、嫌がらせで間違いないですよね?」 「いや? どうだろうね。決めつけるのはよくないよ」 「だって、万が一ですけど、これをふざけてるわけではなくまじめに考えてラブレターとして出してるなら、差出人名を書くじゃないですか。本人は本気なんですから」 「あえて書かない場合もあるよ。対面での告白を大事にしているとか、伏線のつもりだとか……いずれにせよ、思い込みの激しそうな人物だし、君の狭い常識で考えると間違えるよ」  ふたりでスマホをのぞき込み、3枚の画像を見比べる。 「それにしても、見事に全部、君とは真逆だね。屈強でもないし紳士でもないし楽しませるどころかロクに会話もできない」 「う……」  先生はおちょこを持ったまま「よっこらせ」と言って俺の横に座り直し、軽くキスした。 「僕は、誰も守れそうにないほど軟弱で、誰も楽しませられそうにないほど会話が下手な君が好きだよ」 「あの……相談に首突っ込んだの、怒ってるんですか? 悪口すぎません?」 「そうじゃないよ。ただ、これは強調しておいた方が君のためになるかと思って」  ただの悪口にしか聞こえない。 「それにしても、年頃の女の子の心というのは、分からないものだね。きのう相談に来た子なんかね、詳細はコンプライアンス上言えないけども……要するに、付き合う男は周りから評判が良いのがいいと、そんなことを言っていたかな」 「そんなことを、わざわざ先生のところまで相談に来たんですか?」 「そう。女の子の悩みは深遠だ」 「はあ……で、それと俺が軟弱だって話、何が関係あるんですか?」  先生はキョトンとしたあと、おちょこを端に置いて、はあっとため息をついたあと、抱きしめてきた。 「物分かりが悪いね。全部言わないといけないのかい」 「なんですか……?」 「君みたいな周りの評判ゼロの子を手元に置くのは僕くらいなんだから、君もよそに浮かれたりせず、僕を離すんじゃないよ」  なんだ、やっぱりやきもちか。

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