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老人①

「気分はどうかね?」 翌日、空の元にやったきたのは、白衣の老人だった。 数日前に"診察"と称して、空にいやらしいことをした男だ。 「…何の用ですか…?」 空は警戒の色を濃くした。 「そんなに怪しまないでくれ。具合が良くなったか診に来ただけじゃよ。AAAランクの体調管理は大事じゃろう?」 「白々しいこと言わないで…っ!この間だって、診察って言いながら変な事してきたじゃないですか!出てってください!」 空は声を大きくして言った。 この男も自分を性欲の対象として見ているという事はわかりきっていた。 「やれやれ、仕方ないのう。わしの言う事を聞いておいた方がお前さんの為じゃぞ?あのレオという少年が大切じゃろう?」 「…え」 レオの名前が飛び出した事で、空は動きを止める。老人はニヤリと笑った。 「わしは列記とした医者じゃ。体調を崩した少年達に薬を提供するのはわしの役目じゃ。つまり、極端な話、薬に毒を盛って飲ませる事も可能なんじゃよ」 空は言葉を失った。 「意味がわかったようじゃな?例えばこの後、レオという少年に元気が出る錠剤などと言って毒入りの薬を渡す事だって至って簡単じゃ。ただ、死んだりしたら解剖されてわしが怪しまれるから、死なない程度に苦しむくらいが良いかのぉ」 老人はヒッヒッヒッと不気味に笑う。空は青ざめた。 「少年、お前さんがわしを拒絶するなら、早速戻って錠剤を作ろうかのぉ」 「だ、だめ!やめて!レオには何もしないで!!」 「ヒッヒッヒッ、健気じゃのう。じゃあお前さんはどうすればいいか、わかるな?」 空は悔しそうな表情を浮かべて小さく言った。 「…言う事を聞きます…」

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