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リヒトとコウヤ・4

「しかし全く、三十路を目前にして俺もツイてきたな。それもこれも全て煌夜のお陰だ。お前は本当に幸運の星だぜ」 「金の成る木、でしょ」 「俺の片腕。懐刀。第三の目」 「はあ」 「お前は俺には見えないものを見てる。その世界に俺も触れて、守ってやりたい」  プライベートにおいてはその豪快な性格に裏表のない理人だ。だから彼はいつも、俺の前で本音をスパッと口に出す。だけど俺は別に、理人に良いように扱われているとは思わない。理人はこんな薄気味悪い俺をどういう理由であれ気に入ってくれているのだ。 「理人の商売のやり方は好きですよ。やろうと思えば裏のカジノでひと山もふた山も当てられるのに、わざわざこんな回りくどい儲け方……裏社会に通じてる人間ぽくないですよね」 「やめろよ、馬鹿」  口が上手い癖に褒められ慣れていない理人は、俺が褒め言葉を口にすると素直に照れる。柄にもなく頭をかいて赤面するのだ。俺は彼のそんな素直さが好きだった。 「ていうか、お前の能力をフル活用したらカジノなんかすぐ出禁になるだろ。そうなったら俺の信用もガタ落ちだ。となれば、ここは一攫千金よりも安定収入だろ」 「さすが理人、賢いです」 「やめろってば、馬鹿」  俺は赤面する理人を見て含み笑いしながら、コービー牛乳のストローを咥えた。  事務所の窓から見える青空は今日も見事な秋晴れだ。明日も明後日もきっと晴れる。信頼のおける理人の言うことを聞いていれば、自分の未来は見えずとも安定の毎日がずっと続く。  理人の傍に居さえすれば日々の生活だけでなく、心の安らぎも永劫に変わらない。 「煌夜。客が来る前に、それ隠しておけよ」 「え?」  人差し指で自分の首を示す理人。その意図を理解した瞬間、俺の顔は火を噴いたように赤くなる。 「だから言ったんです、余計なことしないで下さいって……」 「雰囲気、雰囲気」  慌ててシャツの襟を持ち上げる俺を見て、理人が豪快に笑った。 「キスマーク付きの美少年ほど色っぽいモンは無いからな」 「……少年って齢でもないです」 「どういう訳か、でかくなっても俺の中の煌夜は十四のままなんだよな。あの頃も今と変わらないくらい落ち着いてたし、大人っぽかったからかね」 「じゃあ理人は、俺を十四歳だと思って淫行してるってことか……変態な上に犯罪者ですね」 「ば、馬鹿言うな。何だよ、淫行って……実質してねえようなモンだろうが」 「ああ、理人の中では一線越えなきゃしてないも同然なんですね。初めて知りました」 「………」  頭を抱えて項垂れる理人を見るのは面白い。

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