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リオ・2
「それじゃ、この『リオ』は?」
「リオは当店でリピート率ナンバーワンのボーイです。サービスも気配りも良く、初来店でしたら是非体験して頂きたいくらいです」
「ほぉ。じゃ、リオくんにするわ」
前言撤回、俺はファイルを閉じながら感心してしまった。理人は仕事を忘れてなどいなかったのだ。何しろこの店はネット上にウェブサイトを持っていない『完全秘密性』なのだから、明らかに堅気の人間でない理人が初来店で即指名なんてしたら店側に不審がられてしまう。
理人は他のボーイにも興味のあるふりをしつつ、実に自然に「リオ」を指名した。
「ですが、リオは今日まだ出勤していなくて……。もうすぐ来る頃なのですが、お待ちになりますか?」
「ああ、それじゃあ近くのホテルで待ってるから、出勤したら部屋に寄越してくれ」
「かしこまりました」
そうして店を出た俺達は近場にあったホテルに部屋を取り、リオが来るのを待った。
「午後四時か……。俺は売り専のことはよく分からないけど、こんな半端な時間に出勤するものなんでしょうか」
腕時計を見ながら俺が呟くと、ベッドの上で煙草を咥えていた理人が得意げな顔で指を振った。
「これから出勤なんて嘘に決まってんだろ。俺らが店に行った時リオはどこか出張してたか、店の個室で別の客を相手にしてたんだろうよ。知らない男とヤッてきた後にサービス受けるなんて、普通は良い気しねえだろ? そういう場合のマニュアルがあるんじゃねえの」
「やけに詳しいんですね」
「ちょっと考えれば分かるって。別に詳しいとかそういうんじゃねえ」
「隠さなくても良い……と言うよりも、俺に隠しごとは出来ないって理人が一番良く知ってるでしょ」
「だ、だからそういう言い方するなって。お前が言うと本当っぽくなるから止めろ」
つくづく理人は素直な性格なんだと思う。俺は弛んだ頬を隠すように、缶コーヒーに唇を寄せた。
「それにしても、リオの写真見たけどアレはかなりの男だな。健太郎が惚れるのも少しは分かる気がするぜ。顔も良いし、体付きも細いのに色気があるっつうか」
「気に入ったならサービスして貰えばいいじゃないですか。金は払うんだし」
「煌夜と3Pならオッケーかなぁ。やば、想像したらちょっと興奮してきた」
「寝言は寝て言ってください。もういい大人でしょ」
理人が冗談で言っているのは分かっていたが、つい冷たく言い放ってしまう。
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