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リオ・3

 そんな俺を見つめながら、理人が笑って言った。 「煌夜こそ、今どきの若者っぽくないよな。初めて会った時から思ってたけど、お前本当に人間か?」 「失礼だな……」 「別に悪い意味じゃなくてさ。なんていうか、人生を達観してるっていうか……。頭も良いし、欲も無いし、一度自分の人生を経験したことがあるみたいっていうか。それでいてそんな特殊能力を持ってるんだから、ある意味で仙人みたいな感じだ」 「……何を言ってるのかよく分かりません」 「説明下手だよなぁ、俺。まあ何が言いたいかって言うと、煌夜は特別な人間で普通じゃないってこと。そしてそんなお前と一緒にいる俺はかなりツイてるってことだな」 「………」  特別な人間。確かにそうなんだろう、俺は。  人に見えないモノが見えるようになってからは、俺自身「他の奴らとは違うんだ」と思って生きてきた。だけどそれは俺が他人より優位な存在という訳じゃなくて、どちらかと言えば他人より下、普通の人間よりも劣っているという意味での「違い」だった。  結局のところ勝ち組というのは、己の人生を楽しんでいる人達を指している。金持ちとか結婚とか見た目が優れているとか、そんなのはまるで関係ない。貧乏でも独り身でもそいつが楽しんでいれば勝ち組だ。  一方俺はただ人生を消化してるだけ。なるべく周りと関わらないようにして、問題を避けて通って、痛い目を見ずにやがて訪れる死に向かっているだけだ。幸いこの妙な能力のお陰で死んだ人間と接する機会が多いから、死に対しての恐怖というものが他人よりも薄い。  だから俺は、半ば死んでいるんじゃないだろうか。ふとそう思う時がある。それが理人の言う「人生を達観している」に繋がるかどうかは、分からないけれど。 「煌夜はさ、何やってる時が一番楽しいんだ?」 「……寝る時と、一服してる時ですかね」  考えながらも素直に答えると、理人が露骨に嫌な顔をした。 「うわ……典型的なダメ人間の発想だぜ、それ。駄目駄目、煌夜はそんなタマじゃねえんだからもっと楽しみを持たねえと」 「それなら、食事をしてる時とか。旨い料理を食っている時、すごく楽しいっていうか幸せな気持ちになります」 「だいぶましな回答になったな。だけどもうちょっと捻りが欲しいね」 「そういう理人は、何が楽しいんです」 「俺は俺をフル活用してる時、かな……」 「………」  照れるくらいなら言わなきゃいいのに。

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