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リオ・10

「ふ、ぅっ……、う……」 俺はシーツに横面を押し付けて唇を噛み、声を押し殺した。理人の前で喘ぎ乱れる自分なんて想像できない。彼の言う通り、自分はいつでも冷静でいなければならない気がして……。 「我慢してるその顔も美人だぜ。もっと良くしてやろうか?」 「い、ぁっ……」 手で握られていたその部分に理人の唇が被せられ、俺は声を荒げる代わりに強くシーツを握りしめた。 「んっ、んぅ……! ふ、ぁっ……」 理人の舌と自分のそれが絡み合う熱い音。電流を流されたようにヒクついてしまう腰。潤んだ視界の中で溶けて行く天井の照明、一秒ごとに高鳴りを増して行く鼓動。 「う、あっ……、あ……!」 耐えきれずに漏れ出た声を片手で塞ぎ、俺は空いた手で理人の髪を掴んだ。 「も、いいです……理人、やめて……!」 「ん」 顔を上げた理人の手の中で、俺のそれはこれ以上ないほどに屹立している。見るのが恥ずかしくて視線を逸らすと、意味ありげに笑った理人が身体を起こし、俺の隣に寝そべった。 「煌夜、俺のも触って」 「………」 ぎこちなく伸ばした手で理人のそれを握る。何度となくしてきたことなのに、毎回顔が赤くなってしまうのはどうしてか。 「はあ……すげえ気持ちいい。煌夜にされるとすぐイきそうになる」 「齢なんですよ、理人」 「前はこんなんじゃなかったのによ……」 「………」 聞きたくない。昔の話など。自分以外の誰かとの経験など。 「うあっ、煌夜っ……」 嫉妬の感情がそのまま上下する手に表れる。つくづく自分は素直じゃないと、俺は自嘲気味に笑った。 「あ、やばい……イきそ、ストップ……!」 「このまま出していいです。俺も疲れてるから、今日は……」  本当は俺もちゃんとしてもらいたかったけど、がっついてると思われるのも嫌で、気の無い視線をドアに送る。 「そろそろ飯も届くかもしれませんし」 「嘘つくなよ」 「あ……」 理人の両腕が俺の身体に絡みつく。そのまま強く抱きしめられ、唇が塞がれた。 「ん、……」 ベッドに深く沈んでゆく身体は焦燥と期待で汗ばみ、まるで理人を欲して泣いているようだ。 「お前の嘘はすぐバレる。本当は出したいだろ?」 「………」 「俺と一緒にさ」 理人に心を読まれるなんて何だか屈辱すら感じる。だけど自分から言わないで済む分、理人のこういう時の洞察力が俺には有難かった。 「は、あ……」 互いに握り合ったそれを擦りながら、俺は理人の胸に顔を埋めた。理人の手でされながら至近距離で視線を合わせる余裕なんて、無い。 「んっ、あ……」 「煌夜……」 「理人っ……。も、もっとゆっくり……!」 「無理」 にべもなく断られ、俺は焦る反面安堵もしていた。 こんな時さえ自分勝手な理人が可愛らしい。ベッドの上、仕事とはまた違った意味での真剣な表情を浮かべる理人が愛おしい。 「あっ、あぁ……! 理人っ……」 「やっと声出したな。全くお前は……いつも手間取らせる……」 「だ、だって……!」 「まぁ……そういうところも煌夜らしいけどよ……」 「あっ、あ……。ん、う……!」  俺は片腕で理人の首にしがみつき、淡い苦痛と快楽の中で潤んだ瞳を閉じた。  声は聞かれても、せめてだらしない表情だけは見られないように。  理人を想うこの気持ちが、彼にバレてしまわないように。

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