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始動・7
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薄暗く、眩しいフロア。隣合って座っていてもその顔ははっきり見えないのに、天井では巨大なミラーボールが回り、それを取り巻くようにして赤や青のフラッシュライトが旋回している。時折目に直撃すると一瞬何も見えなくなり、俺は俯いて海底のような色の床を見つめた。
國安が得た情報のお陰で、俺達は今こんな場所にいる。
「思い出したくないね、胸糞が悪くなる」
繁華街よりもう少し目立たない路地にある雑居ビル地下一階SMクラブ「レッドダリア」。そこの代表である高野銀蔵こと「ダリア」氏が、俺達の向かい側に座って細長い煙草を咥えた。
「こんなのおかしい、って正論言ったお陰で僕の店は柳田に潰されて、こんな小さなハコになっちゃったし。顔は良いけど性格悪すぎだよ、あのお坊ちゃま」
「ああ、確かにな」
胸元まで伸びたストレートの黒髪。黒いシャツ、黒いパンツ、ブーツ。赤いカラーコンタクト。背は高いが痩せていて、煙草を挟んだ指にはドクロの指輪が光っていた。ダリアと名乗った時はニューハーフかと思ったが、こうして向かい合って見てみると何だか西洋の吸血鬼を現代風にしたような出で立ちだ。
「覚えてる範囲で良いから、その時のことを詳しく教えてくれないか」
「できれば記憶から抹消したいけどね。……確か、イベントの最後らへんにいきなり始まったんだよ。五、六人の男の子が一人ずつステージに上がらされて、一枚ずつ脱いでた。僕も初めはそういうショーだと思ってたから、普通に楽しんでたよ」
でも、とダリアの眉がつり上がる。
「三人目の男の子が、『Bクラス』っていう調教された子だったの。見た目は普通だけど、目だけは死んでた。どこまで調教されたのか、どこまで従順にさせられるのか、ステージ上で調教係が説明してたよ、得意げにね」
「………」
「その子はパブロフの犬状態だった。調教係が鞭で指揮をとると、自分からお尻を開いて、中に挿れてたプラグを抜いて、そこから次々に色んなの出してた。別の調教係のアレを咥えながらさ」
想像するのも辛くて、俺は黙り込んだ。理人も同じ気持ちのようだ。
「そっから、客が叫んだ冗談みたいなリクエストを実行させられてたよ。何が、どれだけ、入るのかってね。その子は苦しむことなく淡々と従ってた。でも、あの死んだ目だけは忘れられない」
「……リオをそんな目に遭わせる訳にいかねえな。ていうかリオだけじゃねえ、誰に対してもそんな真似はさせねえ」
理人が膝の上で拳を握り、ダリアに言った。
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