2 / 2
大人の余裕とビクビクオドオド
ドアの近くからいきなり身体を竦めた茶髪パーマが現れてびっくりした俺は叫ぶ。
「ごめんな、あの、お、驚かせるつもりはなかってん、な、あの……明日、よろしくって、あの、言いたかった、だけで、な」
ビクビクしながら途切れ途切れに言うこいつこそ、依頼したクヴァール……燈野。
「お前のためにやるんちゃうからな!」
震える耳に捻り込むように耳元に叫ぶと、燈野はヒィと悲鳴を上げ、逃げていった。
「ていうか、俺がやるならかーくんもセットやろ」
何年一緒にやってんねんって腹いせに先輩もディスりながらかーくんを探す。
「かーくん、おる?……あっ」
かーくんお気に入りの居間に行くと、山田と楽しそうに歌を歌っとった。
かわいい笑顔だったのに、俺を見た途端に悲しい顔をして俯いてしまう。
「ごめん、イヤやんな……帰るわ」
オドオドしているこいつに最初はイライラしかしてなかってんけど、同い年やし優しい歌声を聞いてからちょっと認めてきてんのをこいつはわかってへん。
「すぐ終わるから、そのままおれや」
ぶっきらぼうに言うと、立ったままやけど、止まってくれた。
「かーくん、始末聞いた?」
おかっぱでもうない髭を触りながら俺を見るかーくんは俺の相棒。
「ハヤから軽く聞いたけど、お前1人らしいで?」
「じゃあ、送り迎えだけして。かーくんおらなやりたない」
「甘えん坊やわ、流絵 は」
ふっと大人っぽく笑うかーくんはカッコいい。
「ヤマ、リョウの携帯番号を歌って」
穏やかな声で山田に言うかーくんの顔は元交番勤務だったことがわかるくらい柔らかかった。
せやから、山田も解れたように微笑む。
「かーくん、後でな」
俺は邪魔しないようにボソッと言って障子を閉める。
すぐに高い伸びやかな歌声が聞こえてきて、俺は人差し指を鼻の下に当て、小さく笑った。
ともだちにシェアしよう!