森の奥。 　広い広い屋敷の中で、 　独り隠れる優しい獣。 　お前が盗んで欲しかったのは、 　庭に咲いた美しい薔薇じゃなく、 　淋しく震えるその心。 　獣の姿は醜いなんて、嘆かなくていい。 　人の心は、もっと醜いものだから。 　豪華な食事も、 　天井に届く本の山も、 　一人分には多すぎる。 　可憐なお姫様にはなれないけれど、 　かなしく微笑む唇に、 　俺が愛を贈るから。 　どんな姿でも、 　世界一幸せな二人になろう。