『恋』という字は下心…なんて、 　よく言うだろ。 　気の合う同僚の顔をして、 　お前との距離を縮めている俺も、 　卑しい下心の塊だ。 「奢る」と言えば、 　お前は喜んで誘いに乗ってくれるだろう。 「週末だから」と煽れば、 　いつもよりペースも速くなるだろう。 　そのまま終電を見送って、 「泊まっていけよ」と誘えば、 　程良く酔ったお前は素直に頷くだろう。 　本当は、そんなもの全部計算づくなんだ。 　素面では到底口には出来ない、 　ありきたりな誘い文句。 「……男同士って、興味ねぇ？」 　さほど酔っていない頭で、 　理性が崩れたフリをする。 　今夜だけで良い。 　酒の勢いで構わないから、 　狡くて臆病な俺に、 　どうか一晩だけ、夢を見せてくれ──。