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お題『聖域』
毎日のように顔を合わせて、
挨拶を交わす。
呼べば必ず答えてくれて、
その瞬間は、
アンタは俺だけを見てくれる。
「先生」
職員室から出てきた姿を見かけて、
いつものように呼びかける。
俺の顔を見て、
柔らかく微笑む、眼鏡の奥の瞳。
俺よりずっと小柄なのに、
スーツのアンタは大人で、
制服の俺は、不自由な子供。
俺に出来ることは、
精々勉強が苦手なフリをして、
補習の約束を取りつけることくらいだ。
こんなに傍に寄り添ってくれるのに、
教師と生徒という聖域は、決して犯せない。
窮屈な制服を脱ぎ去てるときが来たら、
迷わずアンタの手を引いて連れ出すから。
だからずっと、
手のかかる俺を見ててよ。
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