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菊池二葉の朝は早い。

とある住宅街にあるごくごく平凡な一軒家、菊池家の次男坊『菊池二葉(きくちふたは)』 中学一年生、12歳の朝はとても早い。 ピピピピピっ、 金曜日。いつもと変わらずベッド脇の目覚まし時計のアラームが部屋に大きく鳴り響きだしたその時刻は、朝の五時三十分。 むずがる様子もなく、スクっと身体を起こしベッドから離れた二葉はパジャマ姿のまま、 まず階下へと向かう。 テキパキと慣れた手付きで軽い朝食をササっと作ると一階の母の寝室へ足を運び、まだ寝こけている彼女に声をかける。 この時点では「んん~…」と唸るような声を出すだけで母はしっかりと起きないため、そんな彼女が頭まで被っている布団をババっと這いだのち、自身は学校へ赴くための準備をしに二階の部屋へ戻る。 そして布団を剥がされたことでようやく意識がハッキリし目覚めた母親にもう一度声をかけるため、学ラン姿で彼女の部屋へ行き。 「じゃあ母ちゃんオレもう行くから、朝ご飯の野菜炒めはちゃんとチンしてから食べてな!」 「はいは~い了解よ。あ、アタシ今日も遅くなるかもだから、明日土曜だしそのままそっち…」 「わかってるって! 母ちゃんも仕事頑張れよっ」 「ふふっありがと、可愛い二葉の美味しい朝ご飯モリモリ食べて、母ちゃん本日もお仕事頑張りますよっと。それとしっかり者のアンタと正反対のアイツのお世話、悪いけど今日もまたよろしくね」 「おうっ任せろっ、へへへ。じゃあ行ってきま~す!」 「はぁい、いってらっしゃい」 そう言って、二葉はテンション高く家を後にするのであった。 この時点で時刻は六時十五分。どう考えても、中学校へ向かうには早すぎる時間帯。 それもそのはず、 彼がルンルン気分で足早に向かったのは自らが通う中学校ではない別の場所―― …カンカンカン、トットット、ガチャガチャっガチャリ、 「お邪魔しま~す、兄ちゃん来たよ~…ってまだ寝てるか、ふふっも~しょうがないなぁ」 Maison de・KOREMOTO(メゾンド・これもと)、05号室。 二葉の兄で菊池家長男の『菊池一詩(きくちかずし』 24歳、会社員の住むアパートだったのだから。

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