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第5話 簡単なこと

「俺に聞くよりさ。クラウンゲームで王様になって本人に聞けばいいじゃん。」 女の子は、かなり頑張らないと王様になれないゲームけどね。 「やだ、か弱い女の子に戦えって言うの!!??酷い!信じられないわ!!」 か弱いかどうかは知らないけど、去年見ている限りゴール地点は協力者と力技が必要だな。 最後はゴール前で王冠の奪い合いだもんね。 「前にも言ってるはずだよ。教えられないって お客さんいるから後にして。何にしますか~?」 俺は田中七海の後ろに並んでいるお客さんに愛想良く注文をうかがった。 「えっ、いいんですか?えっと、マンゴーソース1つと、ストロベリー……」 「ふーん。じゃあ、ずっと交代要員来なくてもいいのね?」 田中七海は興味なさそうにメニューを眺めながら、俺だけにしか聞こえない声で言ってきた。 !! コイツ!! 裏で手を回したな!! きっと交代要員の三人を足止めをしているか、賄賂か何かを渡して来ないように仕向けているかのどちらかだろう。 「マンゴー1つ、ストロベリー二つ入りました。」 「はーい」 「はーい」 奥の二人は疲れていせいか弱々しい声でバラバラに返事をした。 俺だけが辛い目にあうのは まだ我慢が出来るけど、キッチンにいる二人を巻き添えにする事が許せない!! 「どうする?岩崎君のせいであの二人可哀想ね~~。」 「………」 客は次々と来るし、店は目が回るように忙しい。 涼しい顔をして、受け渡しカウンターに居座る田中七海を無視するが何も解決にならない。 どうしよう。 田中七海が呼ばなければ、交代要員は来ない。 俺達、三人は二時間以上休む暇もなく働き続けて疲れてきっている。 「早くー、返事はー?」 立ちっぱなしで足が痛い。 倍に膨れ上がっている気がするくらいだ。 お昼ご飯だって食べていないから腹ペコだし。 俺だけだったら我慢できる。 でも鈴木と佐藤を巻き添えするのは俺の我儘?エゴなのか? だって教えたら田中七海が修斗の彼女だって宣言するに決まっている。 そんなの絶対嫌だっ!! こんなヤツ絶対彼女なんて認めさせるもんかっっ!! でもでも鈴木と佐藤が……………くそっ!!! もう、本当に LIME ID を教えなくちゃいけないのかよ。 教えたら 修斗は俺の事 嫌いになるだろうな…… それが一番嫌だ……。 俺は答えることが出来ず、ただ田中七海を睨みつけるしかなかった。 「ナ~ギ!遅くなってごめん。飯食いに行こうぜ。」 「あ❤修斗君❤」 修斗の声でにらみ合った視線が外れ、田中七海の態度がガラリと変わる。 鈴木、佐藤………………ゴメン。 「……ゴメン修斗、交代要員が来ないんだ。」 「え? そこにいるじゃん。」 「え?私?ダメダメ 当番は二時間後なの。」 「俺達、三人二時間以上 立ちっぱなしの働き詰めなんだ。休憩にも行けない。………本当にゴメン。一人でご飯行って……」 「………………なんだ。そんなこと簡単じゃん。大丈夫、飯に行けるって!」 「????」 きょとんとしている俺達四人をしり目に 修斗はカウンターの中に入ってくると 自分のロッカーの所に行き鞄を取り出す。 中からルーズリーフを二枚取り出して受け付け横にあったマジックで何やら書き始めた。 「よし出来た!」 書きおわった紙には大きく太字で ≪売り切れ!!ごめんね!!≫ と書かれ、それを店のメニューの所に斜めに貼り、並んでいるお客さんに謝った。 「お客さん、ごめんね。一旦閉店するよ~。また後で来てくれると嬉しいな。」 と言ってお客さん達に帰ってもらうと、残りのもう一枚を作業台に張り付けた。 そこには ≪休憩に行きます。文句は時間になっても来ない交代要員に言ってくれ。お金は担任に預けて置く。≫ と書いてある。 「じゃあ、行こうぜ!! 」 やったあ!!と俺達三人は喜んでエプロンを外して椅子に掛けて店を出た。 そんな俺達とは対照的に田中七海は鬼の形相で怒って大声を上げる。 「今から書き入れ時なのに、勝手に休んじゃダメじゃない!!」 「なら、田中ひとりでやれば?みんな、休憩に行くぞー!! 」 修斗は俺達の背中を押して店をさっさと閉めてしまった。

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