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第6話 歩くだけで
店を閉めたその足で急いで俺達四人は職員室にいる担任の所に出向いた。
閉店理由を言ってコインケースを預けるとやっと自由の時間を手に入れた。
修斗と二人で昼飯を食べられると喜んだのもつかの間、待ちに待った出店周りなのに、立ちっぱなしだった足が痛くて、とてもサクサクと歩ける状態じゃない。
俺の歩みがいつもより遅いのに気が付いて修斗が心配してくれた。
「足が痛いのか?」
「うん、少しだけ……わあっ!! 」
言うか言わないかの間に修斗はひょいと俺をお姫様だっこする。
「足が痛いなら椅子のある所まで運んでやるよ。」
「ちょっと!!いいって、姫抱っこは、恥ずかしいって!! 」
「じゃ、恥ずかしくないように急いで連れて行くからしっかり捕まっていろよ!! 」
俺をぎゅっと深く抱きかかえると走り出した。
「わああああっ!! 廊下を走るなあぁぁぁぁ!! 」
俺の抗議は虚しく風のごとく修斗に運ばれてしまった。
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俺が連れられてきた場所はバスケ部の部室の前だった。
修斗は姫抱っこのまま、器用にドアを開けて俺を長椅子に座らせた。
「ここならいいだろう?適当に何か買ってくるから、そこで休んでろよ。」
「………うん、分かった。」
「すぐ戻るよ。」
そう言って出ていった。
く~~っ!! 本当なら修斗と仲良く歩きながら買い食いしていたところなのに~!!
スマホで時間を確認すると、なんと三時間も立ちっぱなしだったことが分かった。
くそ、なんだよ。
関係ない人間も巻き込むなんて
必死なのは分かるけど女子の手口がどんどん陰湿になってきてるな。
でもその意地悪のお蔭で姫抱っこしてもらえて…修斗に思いっきり抱きつけちゃった。
きゃーーーーっ!!
さっきのこと思い出すと、顔から火を噴くほど熱くなった。
「駄目だ、駄目だ。こんな顔してたら修斗に変な奴だと思われちゃう!顔を冷やさないと!」
ぱたぱた手で顔を扇いで、修斗が早く戻らないことを祈った。
待っている間、部外者はなかなか入れない部室が見れて とても新鮮だった。
ここで修斗達が着替えて練習にいくんだよな。
あ、修斗のロッカーここなんだ。
「………………おーそーいー!!遅すぎるよぉ。修斗早く返ってきて。」
はじめはキョロキョロ見回したりして楽しかったけど、そのうち何もすることが無くボーっといるだけでつまらなくなった。
いっそのこと修斗を追いかけてみようかとも思ったけど、入れ違いに戻ってきても困るしなぁ。
確かにさっき早く戻らないでくれと思ったけど、こんなに遅くなるなら お願いしなかった。と反省した。
結局、待つこと一時間やっと修斗が帰って来た。
修斗の両手には、たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、ホットドッグ、綿あめ、ポップコーンなどが二つずつのっており、ヨーヨーは指に引っ掛けてあるのが三つ、頭にはお面が一つ被されている。
「どうしたの、それ?!なんでそんなに買い込んできたんだよ?」
「店の前を歩いたら貰った。」
「え?」
どう見ても二人でも食べきれる量じゃないよ。
「捨てたら罰が当たるからな。全部食うぞ。」
「げっ!マジ?」
モテる男は歩くだけでこれだもんな。
俺とは大違いだと つくづく思った。
貰って来たタコ焼きを ぱくついていると俺の顔を覗き込んで修斗が聞いてきた。
「前から聞きたかったんだけど ナギはなんでこの高校にしたんだ。」
「たまたまだよ。ここがいいなって思っただけ」
「でもナギんちから二時間はかかるだろ?遠くないか?」
「え?1時間50分だよ。」
「!!!……それ あんまり変わんないよ!!」
「あはははは」
嘘をついた。
自宅から遠いのには訳があるんだ。
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