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新入社員(1)
新入社員の控室はざわついていた。
話題は専ら、入社式後に発表される『新入社員の人事について』である。
毎年の慣例で、入社後に発表される人事に新人達は戦々恐々としているのだった。
全国に支店があるため、配属は不明だ。
どこの部署に回されるのか、そのまま本社勤務か、はたまた地方勤務なのか、その地方も海を越えねばならぬのか、新幹線1本で行き来できる距離なのか、その話で持ちきりだった。
若林 弘毅 も御多分に漏れず、従兄弟の池本大輔と肩を並べ、ひそひそ話をしていた。
「おい、弘毅…俺達何処に回されるんだろうな。」
「うーん…一応、希望は内勤で出したんだけど…大輔は営業だろ?」
「うん。まぁ、俺は何処でもいいんだけど…」
「希望は尊重してもらえるみたいだけど、あくまでも『尊重』だからね。」
はあっ…あちこちからため息が聞こえてくる。
弘毅もつられて思わずため息をついた。
母方の従兄弟の大輔とは、さっき偶然顔を合わせた。声を掛けられて本当に驚いた。
同い年の大輔とは気も合って小学生の間はよく遊んでいたが、そのうち大輔の家が遠方に転勤になり、今の今まで俺達は疎遠になっていたのだ。
どこかの有名企業に入社したとは聞いていたが、まさか同じ会社だなんて思ってもみなかった。
でも見知った顔があるのは、引っ込み思案の俺にとって心強かった。
明るくて人懐っこい大輔とは真逆に、俺どちらかと言うと大人しくて物静かな性格だったから、できれば同じ支店がいいと密かに願っていた。
(大輔と一緒になれたらいいのに…
大輔なら何処へ行っても可愛がってもらえるんだろうな…それに比べて俺は…)
そう考えると少し凹んできた。
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