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新入社員(2)
「新入社員の皆さーーん!
時間になりましたのでホールにご案内します!
受付で渡された番号順に並んでついて来て下さーい!」
30才手前…と言った感じの女子社員が号令を掛けると、一斉に番号を確認しながらわらわらと並び始めた。
「じゃあ、後でな、弘毅。」
「うん、後で。」
何が起こるか分からぬ不安と、社会人としての第一歩を踏み出した期待感で身震いした。
粛々と進行した入社式が終わり、待ちに待った辞令が一人一人渡される。
流石に誰もオーバーなリアクションはしない。
希望した所ならガッツポーズものだが、期待外れなら最低5年はその地で我慢しなくてはならない。
自分の思いと違う者、合致した者…みんな心の中で『マジか』『やった!』と叫ぶものの、表面上は冷静に受け止め返事をしている。
大輔は…名古屋か…アイツなら何処へ行っても大丈夫だ。
「若林弘毅。」
「はいっ!」
「本社人事部での業務を命ずる。」
「はい!よろしくお願い致しますっ!」
…人事部か…本社勤務だ!…良かった、内勤だ…
引越しもしなくて済む。
ふっと視線を感じて斜め前を見ると、強面のイケメンと目が合った。
…あの男 …面接官の一人だ…強い眼差しで見つめられてドキドキしてたんだ…確か人事部長だと言ってたな…とすると、俺の上司になる!?
無意識に瞬きしながら軽く会釈すると、その人の口の端が、くっと上がったような気がした。
きゅんと胸が痛くなり、動悸がし始めた。
これ、何だ?
顔が火照る。
何か…“恋した乙女”みたいな感じ!?
いや、そんな。俺はノーマルだ。付き合った女の子もいたし。
視線を泳がせて自分の席に戻ると、数度深呼吸して何とか気持ちを落ち着けた。
これからあの人と仕事をしていくのか…
ぶるりと訳の分からぬ震えが起きた。
しっかりしろ、弘毅!
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