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新入社員(3)
「本日付けで配属された若林弘毅君だ。
慣れぬことも多いはずだから、みんな丁寧に教えてやってくれ。
若林君、ひと言挨拶をどうぞ。」
「はいっ!
本日付けでこちらに配属されました若林弘毅です。
皆さんにご迷惑をお掛けしないように、1日でも早く仕事をこなせるように励みますので、何卒よろしくお願い致しますっ!」
拍手と笑顔で迎えられた…良かった…
それから一人一人自己紹介された。
顔と名前を必死で一致させる。
ホッとひと息付いていると
「若林君、君の直接の上司に当たる寺橋係長だ。
寺橋、頼んだよ。」
「承知しました。
若林君、ようこそ我が課へ!
係長の寺橋です。よろしくね。今日から君の指導は俺が担当だから。
分からないことだらけだろうけど、何でも聞いてね。」
「はいっ!こちらこそよろしくお願い致しますっ!」
うわぁ…部長は強面イケメンだけど、寺橋係長は正統派の“美人”だ。美人って言ってもいいよな?
あ…薬指に指輪…結婚されてるんだ。
そりゃそうだよな。この人に釣り合う奥さんってどんな美人なんだろう…
いいなぁ、結婚かぁ…疲れて家に帰れば可愛い嫁と美味しいご飯が待ってるなんて…羨ましい…
いやいや、今そんなことどうでもいいじゃん!緊張感は何処に行った!?何考えてんだ、俺?
あわあわしていると、
「君の席はここ。備品関係は全部揃ってるけど、私物持ち込みもOKだからね。
パソコンのパスワードはこれ。
隣、俺だから何でも聞いて。
今日は簡単に仕事の流れを説明するから、筆記用具持ってあっちのパーテーションの方に来てくれる?」
「はいっ!」
…係長が担当なんだ…何かドキドキする…
緊張したまま筆記用具を準備して、子犬のように後をついて行った。
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