3 / 280

新入社員(3)

「本日付けで配属された若林弘毅君だ。 慣れぬことも多いはずだから、みんな丁寧に教えてやってくれ。 若林君、ひと言挨拶をどうぞ。」 「はいっ! 本日付けでこちらに配属されました若林弘毅です。 皆さんにご迷惑をお掛けしないように、1日でも早く仕事をこなせるように励みますので、何卒よろしくお願い致しますっ!」 拍手と笑顔で迎えられた…良かった… それから一人一人自己紹介された。 顔と名前を必死で一致させる。 ホッとひと息付いていると 「若林君、君の直接の上司に当たる寺橋係長だ。 寺橋、頼んだよ。」 「承知しました。 若林君、ようこそ我が課へ! 係長の寺橋です。よろしくね。今日から君の指導は俺が担当だから。 分からないことだらけだろうけど、何でも聞いてね。」 「はいっ!こちらこそよろしくお願い致しますっ!」 うわぁ…部長は強面イケメンだけど、寺橋係長は正統派の“美人”だ。美人って言ってもいいよな? あ…薬指に指輪…結婚されてるんだ。 そりゃそうだよな。この人に釣り合う奥さんってどんな美人なんだろう… いいなぁ、結婚かぁ…疲れて家に帰れば可愛い嫁と美味しいご飯が待ってるなんて…羨ましい… いやいや、今そんなことどうでもいいじゃん!緊張感は何処に行った!?何考えてんだ、俺? あわあわしていると、 「君の席はここ。備品関係は全部揃ってるけど、私物持ち込みもOKだからね。 パソコンのパスワードはこれ。 隣、俺だから何でも聞いて。 今日は簡単に仕事の流れを説明するから、筆記用具持ってあっちのパーテーションの方に来てくれる?」 「はいっ!」 …係長が担当なんだ…何かドキドキする… 緊張したまま筆記用具を準備して、子犬のように後をついて行った。

ともだちにシェアしよう!