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第4話-19
「硬い。」
何が可笑しいのか、いつもより陽気に笑う様子に若干首を傾げ、相貌を覆う黒髪を指先のみで耳にそっとかける。すっきりとした顔のつくりが現れて、瞼を開いた彼の双眸が見上げてくる。
「やっぱ男の膝って感じ、女と全然違う」
「…まあ、俺は男だからね」
「だよな。」
そう言いながら、風間は軽く反動を付けて身体を一気に起こした。膝に預けられていた重さと熱が、いともあっさりと消えていく。
スマホをちらりと横目で流し見た後、彼はキッチンに空の容器を片付けに向かった。それから、鳴り止んだスマホを掌で攫ってポケットへ滑らせ、何時も通りの表情でバスルームに向かうその途中、ふと思い出したように薫へと振り向くと「おやすみ」と笑いかけた。
――いったい何を考えているんだか。
薫は、片手を上げる事でその返事としながら、何のわだかまりもない笑顔をただ見送った。
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