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番外編2-2
「ねぇ、渉。美味しかった?僕の料理、美味しかった?渉の好きなものばっかり作ったんだけど、気に入ってくれたかな?」
食卓に歩と2人という、居心地の悪い夕食を終え一息ついた時、歩はすり寄るようにして、ベタベタと渉にくっついてきた。
認めたくはなかったが、正直歩の作った料理は本当に渉の好きなものばかりで味も美味しかった。
「...さぁ」
「もー、渉は本当に可愛いなぁ。でも、僕も中々いいお嫁さんになれる気がするよ。もちろん、渉限定のね」
「っ、触るな!」
スッと撫でられる腰。渉はそれを反射的に手で払い、勢いよくイスを引いて立ち上がった...が、しかし。
「...ッ、てめぇ...何...入れやがっ...た、」
突然歪む視界。方向感覚を失った体は力を失い、不覚にも隣にいた歩に倒れかかる。
「んー?僕はただ、渉が素直に僕に甘えることができるようになるお薬を入れただけだよ?」
「...ふざけ、んな...ッ、」
「ほら、今だって僕にベタベタとしてるでしょ?普段もこれくらい甘えてくれればいいのに。」
不可抗力なこの状況を“甘え”だと指摘する歩。
― よく考えれば、こいつが“普通”に1日を過ごすなんてありえないことだ。料理なんて食わないで逃げればよかった。
その時は恐怖で身体が動かず、逃げるなんて行為もできなかったということは身をもって知っていたが、それでもそう考えずにはいられなかった。
「じゃあ、お腹もいっぱいになったし、お風呂に入ろうか。」
意識は完全に失うわけでもなく、中途半端に残っているせいでこれから起こるであろうことを、強制的に記憶に刻まなければいけなかった。
――
――――
―――――――
「きれいだ。とてもきれいだよ。見てるだけで興奮しちゃうなぁ」
脱衣所の壁に押し付けられたまま、ゆっくりと渉は衣服を脱がされていく。立っているのが限界でまともな抵抗など何もできなかった。
「ひっ...ッ、」
そして下着を下ろされ、露わになる尻の割れ目に布越しでも分かるくらいに熱く滾ったものを押し当てられた。
それから逃れようと腰を前に出せば萎えたままの性器が空しく壁に押しつぶされる。
「いや...だ、嫌だ...」
服を全て剥かれ、曝け出された裸体。体を押さえつけられていた手が離れ、渉は壁を伝いながら床にしゃがみ込む。
その間に自身も服を脱いでいく歩は怯え、蹲る渉の姿を見続けた。
「僕の渉、僕の渉...震えてるの?大丈夫、僕が抱きしめてあげるよ」
「うう゛っ...ぁ、やめ...ッ、」
抱きしめられ、じわり、と伝わる体温。渉の体は震えを増すばかりだった。
全てにおいて自己中心的な兄の存在。盲目的に愛を囁いてくる兄の存在。
妄想をそのまま現実の渉に押し付け、恐怖で支配しようとする。
爽やかに笑いながら鬼畜な数々の行為を強要してくる歩の存在はやはり、渉にとっては恐怖でしかなかった。
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