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第6話
「穂波先輩、大丈夫っすか?」
「...あぁ、松高。久しぶりだな。別に俺はいたって普通だ」
放課後、学内の廊下でボーっと突っ立っていると、不意に同じサークルの後輩である松高に声を掛けられた。
短髪で俺よりも少しだけ背の低い松高はよく気が利くいい後輩で、俺はとても可愛がっていた。
何というか、犬のようで可愛いのだ。
「でも...なんかすごく疲れた顔してますよ。今だってなんか心ここにあらずって感じで...」
「まぁ、先輩はかっこいいからその姿さえも絵になっちゃうんですけどね」そう、冗談か本気なのかよくわからないことを付け加えて、松高は会話の雰囲気を和らげた。
そのおかげで少し元気の出た俺は、笑い、松高を軽く小突く。
「そうだ。あの穂波先輩、俺ちょうど昨日先輩が見たいって言ってた映画のDVD買ったんすけど、よかったら見に来ませんか?」
「おっ、それは見たいな。何だ、お前もあの映画興味あったんだ。」
「あっ...はい。前からちょっと気になってて、」
「ふーん。前、話した時反応薄かったから興味ないのかと思ってた。って、でもお前、彼女は良いのか?いつも一緒に帰ってんだろ?今だって急なことだし...」
俺の言葉に何やら落ち着きなくキョロキョロとあたりを見渡す松高だったが、話が変わるとまたすぐに俺と目を合わせてきた。
「そのことだったら大丈夫っす!今、帰れなくなったってメール送ればいいだけっすから」
「なら、いいけど」
そして鞄から携帯を出して松高は彼女宛てにメールを送る。
そこで俺も携帯を出すと、今日の勉強は中止だ、と知らせるメールを二葉に送った。
久し振りの自由な時間。今まで体調を崩してまでして勉強会なんてことをやっていたんだ。
今日一日くらい別にかまわないだろう。
「あっ、穂波みっけ!今日もお前ん家行くわ」
その時、人混みの中でも目立つ、日向が何処からか姿を現し俺に笑いかけてきた。
だが内容が内容なだけに俺は首を横に振った。
「いや、今日は勉強会やんないわ」
「え?なんで、」
俺の言葉に日向も顔をキョトンとさせる。
「日向先輩、今日は俺ん家でDVD鑑賞を...あっ、よかったら日向先輩も―――」
「松高!そろそろ行かないと帰りが遅くなっちまう。早く行くぞ。....悪いな日向、それじゃあ」
俺は松高が日向も誘おうとしているということに気がつき、慌てて会話を途切れさせる。
そしてモタモタとしていた松高の腕を掴んで引っ張るとそのまま歩きだし、日向から離れていく。
「えっ、先輩...いいんすか?」
「いいんだよ。あいつは毎日俺の家に来てんだから、今日くらい」
「...そうなんすか」
― そうだ。たまにはあいつとも離れた方がいいんだ。好きだからずっと一緒にいたいって思うものかもしれないが....
今は少しあいつのいない空間で一休みして気分転換したかった。
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