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第30話
「...ッ」
ふと穂波は寒さと体中の痛みで目を覚ました。
視界に映る景色は見慣れた自分の部屋ではない。頭が寝起きでうまく働かなかった。しかし自分が全裸という状態に気がつき、一瞬にして記憶がよみがえる。
― あれから寝室に来て、それで...
だが、意識を失う直前の記憶は思い出せなかった。霞がかったようなその記憶も、ただただ日向に犯されていた時のものだけ。
日向の家に来たのは昼間だったが、外の景色を見る限り多分、今は夜が明けた朝方だった。
「...いない、のか?」
軋む体に無理をしてベッドから起き上がりあたりを見回すが、寝室には日向の姿がなく耳をすましても特に居間の方から人のいる気配は感じられなかった。
― 今度こそ、今のうちに帰ろう
今は感傷に浸っている場合ではない、とあえて日向とのことは考えずに穂波はベッドから降りて立ち上がった。
そして歩こうと下肢に力を入れれば、酷使された尻に痛みが走り穴から内腿にかけてどろり、としたものが垂れ、流れ出てきた。
それが日向のものと分かっているだけに、穂波は羞恥で頬を赤く染めた。
寝室を出て居間に行けば、すぐさまティッシュで軽く下半身の処理をし、尻の穴から垂れるものも拭う。
だが奥の方に入ってしまったものは掻きださなければいけないほどだったため、日向が帰ってきてしまっては困る、としょうがなく床に脱ぎ捨てられていた自分の服を身につける。
次に鞄を探すがその中身のノートや参考書などは日向に犯される際、穂波が暴れたためかあちこちに散らばっていた。
そこで急いで拾いにかかるが、中には日向の買っている雑誌なども散らばっており、拾うのに苦労した。
「...ッ!!」
そうしている中、ベランダの近くに来た時、何気なく外を見た穂波はそこからマンションに向かって歩いてきている日向の姿を発見した。
姿を確認するやいなや穂波は大慌てで自分のものを全て拾い上げ、乱雑に鞄の中に詰め込むと玄関へと向かった。
急ぎ過ぎてもたつき、中々靴が履けず思わず穂波を舌打ちをした。
だが結局、そんな時間も惜しく感じ、靴はかかとを踏んだまま玄関の扉を開け外に飛び出す。
鉢合わせだけは避けなければ、と穂波はエレベーターとは逆の方にある非常階段の方へと向かった。
焦りで心臓はバクバクとし、下半身が痛んで何度かふらつく。
それでも落ちないように気をつけながら、早足で階段を降りて行った。
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