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第12話

 「あ、2人ともおかえり...って、わっ千晶!?」  家に帰るなり、千晶は京太を無視して自身の部屋へと逃げるように走って閉じこもった。  「千晶とケンカした。気になるんなら俺じゃなくてあいつに聞いて」  「...っ、ケンカって...それにお前、顔に傷つけてどうした、千晶が殴ったのか?それとも誠太君が何か...」  「だから俺じゃなくてあいつに聞いて。俺は何も言わない。この傷はメイクでどうにかしてもらう」  それだけ言うと春臣も京太の横を通り抜け、シャワーに入りその後寝室に籠った。  自分でも驚くほどに千晶に対して何の感情もわいてこなかった。興奮もせず、ただただ千晶を辱めて終わった。  あのプライドの高い千晶のことだ、今日あったことはよっぽど堪えてるはずだ。これで少しは静かになるだろう。  深くゆっくりと、深呼吸すれば心地よい睡魔が春臣を包み込んだ。  ―――  ――――――  ―――――――――――  「やっぱり千晶ここまで来てたんですね!それなら家まで来てくれればよかったのに、どうして...」  「さぁ、それは俺もわからないけど。でも結局今日学校で返してもらったんでしょ?それならいいじゃん」  「う...ん、まぁ...」  翌日、いつものように食事を終えた春臣と誠太は車の中で談笑をしていた。そして帰り際話題となったのは昨日の千晶についてだった。誠太が言うには昨日、千晶は同じ委員会の生徒たちとファミレスで過ごした帰り、誠太の家を通りがかるついでに返し忘れていたCDを渡そうとしていたらしかった。  しかし千晶は結局家を訪れることはなく、今日学校で渡してきたと言っていた。  「気にしてもしょうがないんじゃない?本人に聞けばはっきりすると思うけど、それができないならこれ以上無駄に頭を働かせるのはやめることだね」  「...そうですね。千晶のことだから何かあればはっきり言ってくれそうですし...春臣君の言う通り考えるのはやめます」  「そうそう、悩むくらいなら楽しいこと考えて過ごした方がいいよ。家にも到着、気を付けて帰って...って、誠太?」  いつものように家の前で車を止めるがなぜか誠太は俯き、そこから動こうとはしなかった。  「千晶は春臣君と一緒に帰りたかったんですかね...だから春臣君の姿を見つけて、本来の目的も忘れて春臣君の下に...」  「もう考えるのはやめたんじゃないの?」  「...ッ、でも、俺...」  「千晶、俺と誠太がキスしてたところ見てたんだって。だからいてもたってもいられなくて誠太が戻ったのを確認してから俺のところに来たんだよ」  「えっ...!?千晶見て...っ、でも、今日いつも通りで、」  「そりゃ言えるわけないんじゃない?親友のキス現場なんて。しかも相手は男で俺。まぁ、誠太は気にしなくていいと思うよ、あいつはさっき誠太も言ってたけど何か思うところがあればはっきり言うやつだから。それに誠太が気にしすぎてもう俺とキスしてくれなくなったら嫌だし」  ニコリとほほ笑めば一気に誠太は顔を真っ赤に染めた。そんな姿が可愛らしくてつい揶揄いたくもなってしまう。  「本当はキス以上のこともしたいんだけどね」  「...っ、」  耳元でそう囁けば誠太の方はびくりと小さく動いた。  「でもそれは誠太に嫌がられそうだからしないよ、安心して。それじゃあここでお別れ。また今度連絡するね」  そういいキスも何もしないままさよならを告げたのだが...  「...春臣君なら、嫌じゃ、ない」  「え...っ、」  「キスも...キス以上のことも、したい」  俯いたまま、誠太はその小さな体を叱咤し声を振り絞ってそう言った。  そして上気した頬をこちらに向け、上目遣いでこちらを見てきた。  それに対し、春臣はあの加虐心をおびた目で笑んだ。

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