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第25話

 1人、残された部屋の中。ベッドで仰向けになっていた春臣の頭の中を占めるのは先程までのこと。  千晶に脅され、誠太にいいようにされて動画まで撮られた。あの時は訳がわからず気がつけば全てが終わっていた。  自分は一体何をしていたのか、とそう思うほどに。それは最後、反射的に出た台詞がその時の春臣の状態を物語っていた。  しかし、そのままおかしくなる春臣ではなかった。1人になった今、あるのは怒りのみであった。  「どうして、俺があそこまでしなければいけないんだ。俺は悪くない、悪くないのに」  過去の2人への懺悔の気持ちは全くもってなかった。だからなぜ自分がここまでされなければいけないのかがわからない。  過去の行いによって自分の俳優業が危うくなることについての後悔ならばあったが。  「これで首の皮一枚繋がったね。それじゃあ映画撮影楽しみにしてるよ」最後にそう言い千晶は部屋を後にした。誠太はというとまだ物欲しそうな目で春臣を見ていたが何を言うこともなく千晶の後に続いて部屋を出て行った。  -また次もある、ってことか。  最早これは誰かに相談できるようなものではなかった。そうなると頼みの綱は自分自身だ。今はただただ千晶たちの腹の虫がおさまるまで耐えるしかない。  たとえ自分に落ち度がないと思っていても。  -そして今度こそ千晶を蹴落として俺が何もかも主役の座に居座ってやる。  そのためにもまずは目先の映画撮影だ。地方で長期のロケとなるためしばらくはホテル暮らしとなるが、それが吉と出るか凶と出るか。  どちらにせよ、自分ができることは体を張ることくらいだ。そうでなければ自分に残されるものなど何1つとしてないのだから。

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