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第43話

 映画もクランクアップとなり、恒例の大きな花束を持った千晶はしばらくするとスタッフや俳優陣に解放され1人京太と春臣の元まで歩いてきた。  「お疲れ様、すごくよかったよ!映画撮影も長かったけど、終わってしまえばあっという間に感じてしまうね」  「まぁね」  京太は千晶から花束を受け取ると「僕は社長と次の打ち合わせの電話があるから」と2人を残してその場を後にした。  「お疲れ様、天宮君。また共演する機会があったらよろしくね」  首を傾げてニコリと笑うが、いつも通り千晶からはなんのリアクションもない。  ここまでくれば千晶の視界に自分が入っているのかどうかさえ怪しいところである。  正直言えばこれで目の前の男と別れてしまいたかったのだが、“皆んなの藤堂君”にはまだ仕事が残っていた。  「ところで天宮君は今日は何か用事あるかな?もしもなかったら撮影の打ち上げがあるから一緒に参加できないかなって思ったんだけど...」  元々不参加だと言われていただけに、どうせ自分が誘ったところで参加するわけがないであろうことはわかっていたのだが、いかんせん頼まれたからにはお座成りにすることはできなかった。  いつも通りさっさと断ってもらってこの場を立ち去りたかった春臣であったが...。  「...別にいいけど」  「...えっ、いいの?」  返ってきたのは思わぬ言葉。まさかの言葉に春臣はつい聞き返してしまった。  - どういう風の吹き回しだよ。  「あんたも行くんだろ」  「あぁ、もちろん参加する予定だけど」  「それじゃあ行く時声かけて。俺時間になるまであんたの部屋で本読んでるから」  それだけ言うと用は済んだとばかりに千晶はさっさとその場を後にしてしまった。  -最後まで別行動はできないってか。  思わず出てしまいそうになるため息。それをぐっと飲み込むと千晶の参加を伝える為スタッフの元へと歩いていった。

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