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相変わらず青白い顔の和真がスウェット姿で立っていた。 困ったような顔で柊生を見つめている。 「何で来ちゃったんですか」 「携帯繋がらないから、何かあったのかと… 何で電気つけてないの?」 「電気がね、止められてるんです」 和真はわざと大袈裟に にっこり笑っている。 「えぇぇ!?」 ー 電気止められてる奴 初めて見た! 柊生は一歩進んで玄関に足を踏み入れた。 フワリとアロマキャンドルの匂いがして、チラリと キッチンの方を見ると、小さな一人用のダイニング テーブルに蚊取り線香の器が置かれ、その中で 大きなキャンドルが火を灯していた。 「キャンプしてるみたいだな」 「ね、俺も思ってました。意外といけるなって」 言いながら和真がゆっくりと近づく。 満員電車の中の距離感まで近づかれ、柊生は思わず 後ずさった。 そんな柊生の動揺も無視して、和真は柊生の首もと 触れるギリギリまで顔を寄せて。深く呼吸する。 「いい匂い」 え?と、柊生が聞き返すと同時に 背中でドアが閉められた。 暗く、静けさに包まれた室内。 互いの呼吸が聞こえる程の距離感。 キャンドルの香りが強くてごまかされていた 和真の香りが脳に響く。 「やりにきたんでしょ?」 耳元で囁くような その声を聞いた瞬間 柊生の心臓がバクバクと音をたてて鳴り出した。 「ラットおこしてますよ」 和真はうっすら笑いながら、柊生のベルトに手をかける。 「ま、、待て、まて!」 慌ててその手を掴んで 止める。 手を捕まれた和真は、首をかしげて上目遣いに 柊生を見上げてくる。 キャンドルの薄い灯りに照らされた和真の目が 酔ったようにトロンとして、理性がぶっ飛んで いるのが分かる。 目をそらさなければ、と思っても 和真の半開きの唇から目が離せない。 和真はゆっくり目を閉じた。 だがその顔を見て、次の瞬間一気に理性が戻り 両手で和真の顔を捕まえた。 キスをされると思ったのか、和真は静かに待っている。 「これ、どうした?」 突然の言葉に和真は え、と目を開ける。

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