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第17話 冷酷な側面

 ダニスとクリスは、国兵の追ってを撒いてこの辺りを任せている闇社会の部下の1人を捕まえては、向かった先を吐き出せると、走ってその場所に向かっていた。 「貴様は、闇の組織の頭だろう!?」 「それを言えば、お前もこの国の隊長格にしては信頼がないんじゃないか?」  ダニスの言葉にクリスはぐっと堪えて言葉を飲み込んだ。確かに、追ってに気づかなかったのはクリスの失態だ。宰相にも最初から疑われていたらしい。  ダニスの方は自分の部下に裏切られたのだから、お互い様だった。これ以上の言い合いは無意味でしかない。 「まぁ俺も部下の癒着に気づかなかったわけだが……そんな事より、今の状況を何とかする方が先だろう」 「言われなくて分かっている!」  そうやって目的地に向かってる中、向かいから見知った顔が走ってくる。天パの髪を揺らしながら向かってくるのはティムだった。  その顔つきは険しい。 「ダニスさん!!………すみません、オレ……!!」  どこか悔しそうな顔をしているティムを見て、アランが一緒にいない事といい大体それで状況は把握できた。  クリスとダニスが走るのをやめると、息を切らしてその前にティムが立ち止まった。肩で大きく吸っている様子で全力で走ってた事がわかる。 「アラン王……」  クリスが食い掛かりそうだったのをダニスが間に手を入れて止める。 「……アランは自ら行ったんだな?」 「……すみません……」  ティムは顔を伏せると奥歯を強く噛み締めていた。  ただの自暴自棄、お人好しだの行為だけなら、ティムがここにいるはずがない。何としてでも止めただろう。こう見えて温情があるティムは、危機的状況で頼まれた事は真っ当する。それが折れたのだから、意志で返されたはずだとティムをよく知っていた。 「お前の役目はなんだ?俺がお前を買ってる理由をアランは理解したから、お前を優先したのだろ?今はそれを最優先しろ。部下を使ってもいい、切り札を持ってこい!」  ダニスの言葉に、ティムは険しい顔を上げると、了解ッス。と言うと別の場所へと走って行く。  クリスは一部始終を見守るとダニスの方へ向いた。 「切り札を、とはなんだ?」 「……暗殺した者と予測される死体は、まだ上がってないだろう?暗殺者が発覚すれば、王子の疑いは晴れる」 「……‼︎ 今の所報告はないが、1週間以上経っているんだぞ?証拠隠滅にもう動いてるんはずだ」  クリスをダニスは見ると不適を笑みを浮かべた。 「さて、どうだろうな。」  正直賭けではある。  王暗殺をした者を生かしておくメリットは基本的にない。アラン王子が疑いにかけられてる以上。尚更邪魔になる。  だが……王子を傀儡にして政権を取る……以外にもいくらでも方法がある。ここまで王子に拘る理由はなんだ?と疑問が少しあった。  暗殺者なんてでっちあげる事もできるだろうが……。 「とにかく、向かうぞ。遅いかもしれんがな」 「言われなくとも」  ダニスとクリスがまた走り出す。  すると、道の狭い路地から、傷を負った男が必死の形相で現れた。それに、ダニスが気づき相手もダニス達に気付くと顔色を青くした。ダニスは立ち止まり男と向き合う。それは、ダニスがこの一帯を任せていたリーダーの男だった。  つまり、今回宰相ガブリエルと繋がって裏切った本人が目の前にいる。ケガを負ったその様子から大方あった事の予想はついた。 「悪い先に行ってくれ、少しお灸を据えたら向かう」  その言葉でクリスも理解したのか、鋭い視線でその男を射抜くと、リーダーの男はぞくりと震えた顔をした。が、それより優先すべき事にクリスは、ダニスの言葉通りに先に向かって走って行った。  ダニスは、キズを負った男に近づいていく。 「裏切っておきながら、えらく間抜けな姿になったもんだな。ラバギー?」  ダニスが、目を細めて不適に笑うのに、キズを負った男ラバギーは顔を青ざめたまま体を震わした。男の目には焦燥の動揺が見られる。まさか鉢合わせになるとは思ってもいやかったようだった。 「アンタが間抜けだったからじゃねーか!こっちの世界ならよくある事だろうが」  怯えながらも吠えるラバギーに、ダニスは鋭い眼光で睨んだ。左手で男の首を掴み強引に壁に押し付けるとそのまま持ち上げるように首を絞める。 「っ……ぐっ……ァア……」 首を絞められ気管が締るのに男は、声にならない嗚咽を漏らしながら足掻くが、首を閉められ酸素が薄くなったからなのか手足が揺れるだけだった。 「ああ、お前の浅はかな裏切りにさえ気づかず俺が油断したのも確かだがな……」  男の呼吸がヒューヒューとして、目が明後日を剥き出した瞬間にダニスは掴んでた手を離した。  男はその場に倒れ込み、首を絞められた事で、派手にむせ返した。隙を与えずに、ダニスは銃を男の額に押し付ける。男はごくりと息を飲んだ。体は震えて、その表情は青いままだ。 「俺の座を狙うのはいい。好きにしろ。だがな、そんな簡単に相手の思惑に利用され部下を容易く失う様なヤツに、譲る席はない。てめぇのチンケな謀略で何人の部下が死んだ??俺からこの座を奪いたけりゃもっとマシな頭を使うんだな」  男は恐怖で身動きすら出来なかった。 銃を押し付けるられてるのもあるが、怒気もなく冷静に淡々とした口調で冷ややかに脅し、顔色は一切変えないダニスのその在り方が怖かった。  その姿に一切隙はない。逃れる余地もない。ただ酷く冷めた言葉が淡々と上から降ってくるのに、身が縮む。 裏組織の脅し合いといえば、迫力や凄みで相手を脅す。それで負けまいと凄み返してなんぼだが、このダニスという男は今までと違って冷静な声で淡々と脅してくる。その声は酷く冷たく、怒号が飛ぶより遥かに恐ろしいものに感じた。  このダニスという男は、無表情で銃を引ける。そこに何の感情も持ち合わせない。それがまるで普通であるかように振る舞う。  ダニスが、頭で居られるのは頭がキレるのもあるが、そのあり方が異質だからだった。何ともない顔で冷酷にさえなれる。それが、この人の怖さだ。  それが、少年を連れてきたのを見て隙ができたと思ったのがそもそも間違いだったと、ラバギーは思った。 「お前はここの一帯から降ろす。一からやり直しできるだけ有り難いと思え」  ダニスが銃口を男から逸らす。男は崩れ落ちるように地べたに両手を付いた。男は、はい、と弱く返事を返した。  その様子を見て、もう敵意がないの感じてからダニスは銃をコートの内ポケットにしまうと、目的の方へと向かった。  情報を得た場所にクリスは辿り着くと、そこはダニス……いやあの傷を負った男の部下達が地面に転がっていた。  アランの姿はなく、兵士達も引き下げた様子だった。 「くそっ!遅かったか!!」  眉間にシワをよせて、奥歯を噛み締めて悔しいを抑え込む。手は拳を握って自分への浅はかさに怒りで震えていた。 「隊長……っ!!」  そこで、自分の部隊の兵数人が姿を現した。 クリスは、顔を上げて呼んだ兵達に顔を向けると、兵達は何か申し訳そうなる顔をしていた。 「すみません……気づかずにこんな事になったとは……」 「お前達の責任じゃない。私が浅はかだっただけだ。」  しかし……と言いかけた兵達を遮るように、クリスは首を横に振った。  多分、自分の部隊兵までも利用されたんだろう。相手は宰相だ、最悪こちらに決定権はない。元々怪しまれていたのなら、部下が悪い訳ではない。  なんて己は力不足なんだろうか……と情け無くなった。 「やっぱり遅かったか……こんなに殺してくれるとはな…」  ダニスが後から現れ、その顔に驚いたクリスの部下達が身構えた。クリスは、部下に剣を収めるように手を向けて首を振る。  ダニスは、収めどころがまだついてないクリスの前に行くと両手を差し出した。 クリスは、意図が分からずにダニスの顔を見る。 「俺を捕まえろ。こうなったら中から連れ出すしからないだろう?」 「なっ………確かに、しかし、私はもう宰相に疑われてる身だぞ。上手くいくか分からない。」 「だったらそこの部下にやらせればいいだろう?」  何を……とクリスが言いかけて、何か気づいた様に手を口元まで持ってくると考える様子を見せた。 「だったら、私もそうしょう」  クリスの言葉に、部下達が目を見開いて驚いた。  何を言っているんですか!?と部下達が叫ぶ。 「お前には逃走する時に、手助けしほしいんだがな」 「だつたら尚更必要だろう?城の中に詳しいのは私の方だ。」  クリスが、どうや決心したらしい。牢屋に入るって事は騎士として汚名を被るのと同じ事のはずだ。だが、クリスの顔を見ると言った所で意味はないだろう。この男は自分が正しいと思ったら、曲げそにない。  ダニスは肩をすくめてやれやれとため息を付いた。 「ちょっと待って下さい!そもそも貴方の部下なのですよ。俺達だって信用されるか……」 「それは、簡単な事だ。不詳を犯した隊長に嫌気がさして別の部隊に移る代わりの土産。って事にしたらいい」 「なっ、私達は何があってもクリス隊長の部隊の兵士です!!」  兵達をが背中をピシッと揃えてクリスの前で敬礼する。 クリスは、それにどこか安堵したのか、微かに笑みを作った。 「ありがとう。しかし、君達を今巻き込む訳にはいかない。……今はこの作戦で行こう。王子を連れ出してファンデル家まで送った次……その時は私にまた力を貸してくれないか?」 「……っ当たり前です!!」  クリスの部下達は少しどこか悔しそうな顔を浮かべながらも、自分の隊長に敬意で返し声を揃えた。  ダニスはふっと笑って見せた。 「なんだ、いい部下がらいるじゃないか?」 「貴様と違ってな」  話がつき、ダニスの手とクリスの手に拘束具がはめられる。怪しまれない為に武器なども、クリスの部下達が預かった。 「脱走し易ように、牢屋まで行きます」 「必要ない。……あそこの作りは知っている」  それを聞いたクリスが、何で貴様が城の牢屋の構造を、知っている!?と訝しげに睨んでくるのに、ダニスは肩をすくめて息を吐いた。  ただたんに、1度入った事があるだけだ。 と言ったが、クリスはそれで納得していない様子だった。が、相手にしてる場合でもないので無視した。  さて、……あの王子様は無事でいればいいんだがな……。  最初に出会った時に、トラウマを植え付けられていたのを思い出すと、ダニスは嫌な予感しかしなかった。

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