21 / 28

第21話 おさまらない熱

 アランは、クリスの持ってきた服に着替え、腹を満たしてから外が暗い内に、3人は倉庫の外へと出た。クリスも騎士の服が目立つ為、民間の服に着替えていた。  兵を避けながら、下町の方へと向かっていく。前にダニス連れられて行った拠点に行くのかと思えば、どうやら違うらしい。クリスは、アランより少し後ろの右側辺りからついてくる形で周囲を警戒していた。  前に向かった拠点とは、違う方へと向かうと段々周りにいる人達から、こちらへ視線が集まる。  見た目からは、一つの民間一軒家にしか見えないレンガ造りの家の前には、ダニスの部下である大きい体躯をしてサングラスを掛けているボーンが立っていた。  こちらに気づいたボーンが、軽く会釈する。 「守備はどうだ?」  ダニスがボーンに向かって最初に掛けた言葉がそれだった。既にクリスの存在を認知しているのか、クリスがいる事への言及もなく、外見一軒家にしか見えない家へ入っていく。 「向こうは滞りなく引き払いました。ダニスさんの直下はこちらに移っています。また、他も引き払ったようですね。」 「下手したヤツらは?」  ダニスが移動するのに合わせて、ボーンが説明する。コートの内ポケットから、ダニスがタバコを出すとつかさずボーンがマッチでタバコに火を付けた。  こういうやり取りを見ていると、やはりダニスは闇組織のリーダーである事を思い知る。普段が冷静沈着なだけで、組織のボスであるという威圧的な風格みたいなものを感じないせいなのかもしれない。 「取引した頭には、頭から降りてもらいました。他の部下達の処遇は、ダニスさんの判断に任せますが」 「末端に責を負わせても意味はないがな、一からやり直せる場は作ってもいいだろう。どの道あの区画を取締る人材は必要だ。そうだな……」  多分、ダニスを騙してガブリエルと取引した人達の事を話しているんだろう。その話が話されていく。クリスは周囲を見ているようだった。  話が終わったのか、ボーンがアラン達の方を見た。 「クリスさんには、部屋を別に用意します。」 「私には、……だと?」  ボーンの言い方に引っかかったのか、クリスはボーンを訝しげに見た。わりと鋭い眼光で見たクリスに、ボーンは特に微動だにせずにサングラスを指で押さえる。 「アラン様は…」  そこで、ハッとアランはとある事に思い出して、ボーンに視線を送って首を横に振った。  忘れそうになっていたが、アランはダニスの配下達には愛人だと思われている事を思い出して内心慌てた。そんな事を知らないクリスが、仮に偽りであったとしても、ダニスにどういうことだ!?と目を釣り上げて食い掛かりるような気がした。  アランは、ボーンに必死に目で伝えようと見る。  ボーンは軽く息を吐いた。 「何を警戒してるのか分かりませんが、アラン様には別の部屋を用意します」  どうやら伝わったらしい事に、アランはホッとした。  クリスは、それで引いて納得するしたのか、分かった。と頷いた。とはいえ、どこかまだ信用してそうにはない。元々クリスは騎士部隊長で、街を平穏にする為に動く側だと思うと、こんな状況でもない限りこうやって黙って付いてくるだけでも異常な事なのかもしれない。  ボーンに案内されて、部屋の前に移った。隣側にクリスの部屋が用意されたようだった。  アランは少し休みたいと、クリスに言って用意された部屋へ入る。中は移ったばかりだからなのか、物が最低限置かれている簡素な部屋で、アランは、疲れでベッドへ倒れたい気持ちを前にバスルームへと向かった。  バスルームへ入り、蛇口を捻る。まだぬるま湯なシャワーを頭からアランは被った。  そして、大きく息を吸って吐いて、気を抜くと一気にアランは必死に抑えていた平常心の皮が剥がれた。体は全身熱く感じ、息が荒くなる。身体中の血液の循環もドクドクた速くなっている気がした。  媚薬の効果が継続してあるからかもしれない、けど途中でダニスに中断された事で余計に収まりが悪いのか、全身が疼いているみたいだった。 「こんな……の……」  どうしたらいいのか分からない。  持て余す熱をどう発散すればいいのか分からずにいた。たぶん、ダニスにしてもらった程度では治る気がしない。とはいえ、多分今はダニスは部下に今後の事について話してるだろう。でも、このまま我慢し続けれる気もしなかった。 「とりあえず……気持ち悪いのどうにか……」  ガブリエルの部下に弄ばれた後のまま、移動したせいで中に放たれたのが中に残ってる感じがしていた。  アランは、恐る恐る自分の尻の孔へと手を滑らせ指を入れた。 「っ………」  アランは自分の指を入れただけでさえ、ピクリと体が震え、ゆっくりと中の不快なものを掻き出していく。そんな行為さえ、アランの前のものは反応して立ち上がった。  それに、心底嫌になる。  体の制御ができずに荒い吐息を吐きながら、不快感を出し切った。  前に、ダニスに抱かれた時は、こんな事をしなかったのを思うと、気絶している間にダニスがやってくれていたんだろうなと思い巡される。  それと、同時に抱かれた時の事も思いだしてしまって、アランは顔が熱くなるのを感じた。  あの時も、媚薬なろうか?のようなものをティムに盛られて、半そうするしかないみたいな状況で、何もかも体が反応してしまう程だった……でもその時は、今回みたいに体と心が別みたいで気が狂いそうな事は無かった。  今ならアランにも分かってしまう。最初こそ戸惑って当て与えられる快楽に困惑していたけど、途中から嫌では無かったんだ。と今更思い知られされた。 「……ダニ……ス……」   自分でもおかしいと思う。 アランは、気付けばダニスにされた事を思い出して、尻の穴に入れた自分の指で中を弄り、熱で治らない前の自分自身をアランはもう片方の手で握る。  体は、バスルームのタイルの壁に体重を預けて、アランは自分の手でゆっくりと扱き出した。 「っ……あっ……」  ダニスがどうしていたか思い出しながら、アランは治らない熱を自分で慰める。前の手の動きに合わせて自分で尻に埋めた指を弄った。  アランの自分の体がふるりと反応する。  自分の口からは抑えようとしても、上擦った声が漏れ、それでも、アランは段々と、扱く手も尻に弄る指もスピードを上げていった。 「っあ……ああっ……ふっ………〜〜〜!!!」  アランの扱いた自身から、勢いよく液が放たれる。アランの体はビクンと大きく跳ねた。  大きく息を乱して、出し切った後から余韻に浸る。その間、どこか寂しく感じてしまった。  アランは、息を整えるとハッと我に返ると顔色を青くした。  私は何を……!?  これでは、ダニスを……とアランは頭を混乱させて、とりあえずバスルームから上がった。  落ち着かずに、部屋の中をぐるぐると歩き回る。自己嫌悪で死にたい気持ちになる。  わ、忘れよう。  寝よう!!  そう自分のした事から目を反らして、アランはベットに潜って、まだ治りのつかない体を放置して、眠りについた。 ※  また、懐かしい夢を見た。  ダニスと会ってから、彼の夢をよく見るようになった。それは、ダニスの見た目が似ているからなのか、雰囲気も性格も違うのに……。  幼い頃のとある王城で開かれた舞踏会の日だ。  アランは、レニウスが居ないかと周囲を見渡すと、両親と一緒にいる所を見つけて勢いよく走り出して、声を掛けた。 「レニウスー!!」  そう呼びかけて、こちらに気づいたレニウスは、一瞬だけ戸惑った顔をした気がしたが、直ぐにいつものレニウスの様に笑い掛けては、慌てると行儀が悪いぞ。と優しげな声と共に注意しながらも、アランの頭を撫でてくれた。  それで、ふと気付いた。  なんでだろう?撫でられる手に違和感があった。どことなくぎこちないその手に、アランは顔を上げてレニウスを見た。 「どうかした?」  不思議に思ってそう言葉にしたアランに、レニウスは少しばかり驚いたような顔をしている。それも一瞬の事だったかの様に直様、いつもの穏やかそうな顔に戻って、何がおかしいのかクスクスと笑った。 「アランには、誤魔化せないなぁ。ちょっと緊張しててね」  緊張している?レニウスでもそんな事があるのかと、アランは幼心ながら珍しげにレニウスを見る。レニウスは、アランよりそこそこ離れた年上の少年で、跡取りだからなのかとてもしっかりしていた。周囲とはいつも穏やかに接しているのに、堂々としている。  でも、本当に緊張しているのだろう。公の場とプライベートはきちんと分けるレニウスが、アランの事を呼び捨てで呼んだのだ。それに、落ち着いて見えるのに、どこか居心地が悪そうに見えた。  アランは、レニウスの片手を握った。  レニウスは、またも黒い瞳を小さくしてアランを凝視して驚いた顔をする。 「こうすると、少し楽になるって言ってたから」  それは、以前レニウスにしてもらった事だった。人前に立つ事にまだ慣れない時、ひっそりその前に会った時にレニウスがそうしてくれた。  レニウスがアランの手を握り返す。 「ふ、……ありがとう」  アランは、一瞬目を奪われた。  穏やかりに返すと思っていたレニウスが、冷静の中に少し笑みを溢したみたいな、どちらかと言えば男らしい笑みを浮かべた。  今まで見た事のない笑に、アランは見つめていると。また直ぐにいつものレニウスの雰囲気に戻った。  まるで、いつものレニウスが偽りのように思えるようなその笑みに、アランは不安をどこか抱いた。けれども、その不安も直ぐに忘れたのだ。  それっきりそういう風に笑みを浮かべるレニウスを見なくなった。

ともだちにシェアしよう!