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第一章・6話
それを見た瞬間、公彦は男の腕を払おうと手を挙げた。
だが、その途端。
「やめてください!」
ぐいッ! と清水が中年男の腕を捻じ上げたのだ。
周囲の目が、一斉に二人に注がれる。
軽蔑、嫌悪、失笑の空気が拡がる中、公彦は挙げた手のやり場に困った。
まさか、清水が自分で撃退してしまうとは!
そこで、ふと眼が合った。
にっこり微笑んでくる清水。
(え? え!?)
もしや、俺を覚えてくれているのか。
それとも、ヒーローになり損ねた俺を笑ったのか。
そんな事を考える中、痴漢を暴かれた男は次の駅で足早に降りて行った。
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