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第一章・9話
「今日の1限目、なに? 僕は文化人類学」
「俺は憲法概論だ」
「全然違うじゃない」
二人で、顔を見合わせて笑った。
笑うついでに、清水が先程の痴漢の件を持ち出してきた。
「さっきはごめん。せっかくだから、藤井君に助けてもらえばよかった」
「気づいてたのか」
振り上げて、行き場を失った空拳。
それを思い出して、清水はくすくす笑った。
「下手したら、藤井君も痴漢と思われちゃう所だったよね」
「それは勘弁!」
空白の三年間が、瞬く間に埋まってゆく。
別れる頃には、昼食を一緒に摂る約束まで交わしていた。
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