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第一章・11話
再会して、公彦は葵と同じ電車に乗るようにした。
一緒に登校し、一緒に昼食を食べ、そして時々夕食も共にするようになった時には、もう夏だった。
葵が公彦の部屋へ来るようになったのも、その頃からだ。
二人で思い出を語り合ううちに、やがて葵が真面目な顔をして呟いた。
「覚えてる? 僕にシューズを貸してくれた事」
あぁ、とすぐに思い出した。
可愛らしく優しい葵は皆の人気者だったが、それでも捻くれた人間はいるものだ。
妬みの嫌がらせを受ける事も、時々あった。
ある日、靴棚を前に暗い眼をしている葵に会ったのだ。
体育で運動靴に履き替えている間に、靴棚のシューズの中に、マヨネーズがたっぷり捻り出されて汚してあった。
これではとても履けやしない。
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