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第一章・12話
そこで公彦は、自分のシューズを葵に貸した。
その日一日裸足で過ごしたが、どうという事はなかった。
葵のためなら、裸足くらい何ともなかった。
「ぶかぶかだったけど、嬉しかった」
「翌日、真っ白に洗って返してくれたな」
手にしたグラスを置いて、葵が改めて公彦の眼を覗きこんできた。
顔がぐんと近づき、公彦の鼓動は、どんどん速くなっていく。
「あの時から、藤井くんの事好きだったんだけど、気づいてた?」
再会した時は眼を疑ったが、今度は耳を疑った。
好き!?
俺の事が、好きだったって!?
あれこれ考えるより先に、こう言っていた。
「今は?」
ぽぉっと赤く染まる、葵の頬。
震い付きたくなるくらい可愛い。
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