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第一章・13話

「俺も」 「え?」 「俺も、好きだった。そして、今はもっと好きだ」  そう言って、自分からも葵に顔を近づけた。  逃げない、葵。  そっと瞼が閉じられた。  公彦は、かすかに震える葵の唇に静かにキスをした。  唇を、触れた時と同じくらい静かにゆっくり離すと、葵は真っ赤になって俯いていた。 「ごめん」  思わず謝ったが、震える声で返された言葉は嬉しいものだった。 「謝らないでよ。……すごく、嬉しいんだから」  そして、今度は葵の方からキスをくれた。  熱い夏の始まりだった。

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