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第二章・2
「母さんは、ちらし寿司には紅しょうがを刻んで添えてくれたよ」
「香り揚げに、生姜は入れなかったの?」
「お吸い物には、三つ葉も入れて欲しかったな」
万事、この調子。
全ての料理に、母を引き合いに出してくる肇。
初めの内は、逆にやる気が出ていた。
いつか、母さんの味だ、と言わせて見せる。
いつか、母さんの料理より美味い、と言わせて見せる。
しかし、もう疲れてしまった。
この3ヶ月で、肇の母の影に降参してしまったのだ。
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