55 / 102

第二章・最終話

 朝、ホットケーキを焼く肇の隣には、扶実がいた。 「今! 今すぐ火から降ろして! そして、濡れ布巾でフライパン冷まして!」 「う、うん」  テーブルの上には、焦げたホットケーキが数枚、炭の臭いを放っている。 「ひっくり返して。早く!」 「わ、解った」  何てこと。  扶実は、呆れを通り越して面白くなっていた。  まさか肇が、料理はほとんどやったことがなかったなんて!  これでは、『おふくろの味』の再現は、まだまだ先になりそうだ。  でもそうしたら、それだけいっぱい肇の傍にいられる。  肇の料理の腕が上がるまで、ずっと彼の傍にいられるんだ。 「母さんの味とか何とか言いながら、この体たらく。情けないだろ?」 「全然!」  だってほら、4枚目のホットケーキはこんなに巧く焼けたじゃん。  甘い香りのキッチンに、二人の甘い生活が始まっていた。

ともだちにシェアしよう!