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第三章・始まりは取材デートから
乾杯!
明るい声の輪の中に、遠藤 秀郎(えんどう ひでろう)はいた。
しかし、嬉しそうな仲間たちの中の秀郎は、プチ憂鬱。
彼は今、イベント帰りの打ち上げでファミレスに来ていた。
男ばかりの、むさくるしい5人組。
拍手をし、5名は安い発泡酒を飲んだ。
「今回も無事に新刊を発行し、完売。これも、皆さんのおかげです」
「我が嶺南大学のマンガサークルも、名が売れて来たね」
「それは何たって、遠藤の功績が大きいよ!」
「言えてる!」
集まる視線に、秀郎は愛想笑いをした。
「いや、俺なんか。みんなの個性がそれぞれいい味出してるからだよ」
そんな風に謙遜した秀郎だったが、本心は別にあった。
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