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第1話
「……リョウ、リョウ」
随分と遠くから、微かに声が聞こえる。夢の中かな?とても聞き覚えのある、耳障りの良い、それでいて胸が高鳴るこの声は――
「リョウ!」
「ふぁっ!?」
今度は至近距離、まるで耳の中で発せられたような声に、リョウは一気に夢の世界から引きずり出されて飛び起きた。でも、周りには誰もいない。ここはアヤの部屋だ。そうだ、昨日からお泊まりデート中だった。時計を見ると朝の八時、いつもならアヤは間爆睡している時間のはず。どこに行ったんだろう、頭を左右に振ってキョロキョロと辺りを見回していると、
「待て、そんな動、わあっ」
ボリュームを絞ったラジオのように小さな声がそう言ったかと思うと、リョウの肩あたりから何かがぽとりと落ちて、ふかふかの掛け布団にバウンドした。
溜息をつき、かぶりを振りながらのっそりと起き上がったのは。
「あ、アヤ……?」
リョウがこれ以上開かないぐらいに目と口を開いて、そのちいさなもの――小型化したアヤ――を見つめた。
「どないしたん……」
「こっちがききたいよ、朝起きた時はなんともなかったんだ。出勤の準備してる間にだんだんこんな」
アヤの表情は不機嫌丸出しであるが、ちいさいだけにムッとしていても可愛らしかった。リョウが恐る恐る手のひらをそっとアヤに差し出すと、しばらく思案した後アヤはリョウの手のひらに乗った。その大きさは、昔から女の子に人気の着せ替え人形ほど。250ミリリットル入りのペットボトルよりは大きいが、500ミリリットルよりは小さい、そんなサイズ感。
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