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第2話
「今起きたとこ?腹減ってへん?」
「ん、ちょっと」
どうしてこうなった、は考えてもわからないならひとまず横に置いておこう。リョウはお世話モードに入り、新大阪駅で買ってきたアヤの好物・豚饅をレンジで少し温め、そら豆ほどの大きさにちぎってアヤに渡した。与えられたものを一心に食べるアヤを見ていると、リスやハムスターなんかの小動物を飼い始めたような気分になる。
「なんか飲むもの欲しい」
下から見上げてそう言ってくるアヤにリョウの庇護欲は掻き立てられっぱなしだ。はいはい、とニヤけながらキッチンでミネラルウォーターをコップに注いできたはいいが、さてどうやって飲ませてやればいいものか。コップによじ登ったところで水には届かず、下手をすれば落ちて溺れてしまいかねないし、ストローを咥えるにも大きすぎる。そこで思いついたのが、ストローの先をコップの中に入れて、ストローの上部を親指で蓋をして、口に運んでやるという方法。
「上向いて口開けてて」
リョウはアヤに口を開けさせ、そうっとストローをアヤの頭上に運ぶ。
ふと、目が合った。リョウを懸命に見上げながら、口を開けて待っているアヤと。何かをおねだりしているような、お預けをくらっているような、そんなふうにも見えるアヤを見ていたら、妙な気持ちになってくる。けれども今はそんなことを考えいる場合ではない。早く水を飲ませてあげないと、邪念は頭の隅へ追いやり、蓋をしている親指をそっと離した。
「っ!」
アヤがぎゅっと目をつぶった瞬間、まるでバラエティ番組でよくある罰ゲームのように頭上から水が降ってきた。水が多すぎたか、はたまた邪念を追いやりきれていなかったのか。リョウはごめんごめんと慌てふためいて、その辺にあったハンドタオルでアヤをくるんだ。ゴルフボールほどの大きさになったアヤの頭を、いつものように拭いてやる。この時、心地よさそうにされるがままにじっとしているアヤに、いつも愛おしさを感じる。
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