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第3話
「寒い」
そんなリョウのときめきとは裏腹に、困った様子でアヤが訴えかける。それもそのはず、くるんだタオルを剥いでみたら、服までずぶ濡れだった。出勤の準備をしていたとのことで、薄いグレーのワイシャツに黒のネクタイ、黒のスラックス姿だが、その全てがびしょ濡れだ。ワイシャツが素肌に貼り付いていて、肌の色が透けて見える。
「着替え……っていうてもこのサイズはないしなあ。でもまあとにかく脱ごっか、風邪引くわ」
リョウが脱がしてやりたかったが、小さすぎるボタンはリョウには外せない。仕方なく、アヤが自分で脱いでいるところをじっと見ていた。
下着一枚というところまできて、アヤは動きを止めてリョウを見上げた。リョウは何も言わずにずっと、じっと見入ったままだ。
「……何見てるの」
「別に?あ、その分じゃパンツも濡れてるやろ?早よ脱ぎ、ドライヤーで乾かそ」
「すっごくいやらしい顔してるの気づいてる?」
「えっ?いやらしいだなんて、そんな、俺はただ単純にアヤが困ってるやろなって」
眉尻を下げて言うが、どうも嘘くさい。
「ほら早よパンツ脱ぎ」
ゴムに指をひっかけて引き下ろそうとすると、アヤが慌ててその手を止めた。
「っ自分で脱ぐ、から」
そろそろと黒のボクサーブリーフを脱ぐと、リョウに渡した。文字通り一糸まとわぬ状態になったアヤと、それをまじまじと眺め続けるリョウ。
「早く乾かして来いよ、でそのタオルよこせ」
先ほどのハンドタオルを奪い取ると、すっぽりとくるまった。
「乾かすの、もうちょっと後でもようない?」
「は?」
「それからこれもいらんことない?」
今くるまったばかりのタオルをリョウが剥ぎ取った。
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