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第一章・9

 空の家庭は、貧しい。  彼が体を売ってまで金銭を稼ぐのは、弟妹の給食費や教材費のためだった。  父親が多額の借金を抱えての、放浪生活。  借金取りに居場所が見つかると、その日のうちに即夜逃げだ。  友達など、できる暇もなかった。 「神くん、いい人だな」  彼の差し伸べてくれた手。  華やかな拍手。 「友達に、なってくれるかな」  またピアノを聴きたいと、言ってくれた。  ピアノをやっていて、良かった。

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