41 / 107
第二章 スウィート・スウィーツ・ラブ
キンモクセイの木に蕾ができる頃、彼はやって来た。
「白河 瑞(しらかわ みずき)です。よろしくお願いします」
坂田部長の隣で、瑞はぺこりと頭を下げた。
室内は拍手で包まれ、武藤 涼真(むとう りょうま)も多分に漏れず手を叩いていた。
季節外れの新入社員。
故郷で家業を継ぐために辞めて行った高橋の後任として、瑞は入社した。
「求人一人に80人集まったらしいぜ」
「優秀、超優秀。ぼやぼやしてると、追い越されるかも」
「社長、ルックスで選んだんじゃないの?」
そう言われるほど、瑞は整った顔立ちをしていた。
その上、すらりとしたしなやかな身体。
美形好きな社長なら、そう言われても仕方がない。
涼真はくすりと笑ったが、次の言葉で笑顔は消えた。
ともだちにシェアしよう!