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第二章・2
「でも、Ωだろ」
α、β、Ωの垣根を超えた、自由な社風の会社だが、まだこんなことを言う奴がいたとは。
涼真はそこまでで喫煙室を出た。
瑞の、Ωの悪口を聞くほど悪趣味ではないし、暇でもなかった。
涼真は、今の部署でチーフを務めている。
新入社員・瑞の研修と社に慣れるまでの教育は、彼に任されているのだ。
爽やかな朝が、心無い差別で台無しだ。
デスクに戻ったその時に、瑞が現れた。
「おはようございます、武藤さん」
「おはよう」
瑞は、ビジネスバッグのほかに大きな紙袋を下げている。
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