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第二章・17

 休日、瑞は早起きをした。  日の光が差す明るいキッチンで、涼真のためにチェリーパイを作った。  パイ生地もカスタードクリームも、お手製だ。  市販のもので簡単に済ませる気には、なれなかった。  チェリーだけは季節的に手に入らないので、缶詰だが。 「武藤さん、美味しいって言ってくれるかな」  いい匂い。  オーブンから漂うパイの焼ける香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。  ああ、こんなに楽しくお菓子を作るのって、久しぶり。 「武藤さん……」  胸いっぱいに吸い込んだのは、何もパイの匂いだけじゃない。  いつの間にか、胸は涼真でいっぱいになっていた。  瑞は、ようやく恋を自覚した。

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