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第二章・16
「ね、俺にご褒美くれないかな?」
「ご褒美?」
「3日間がんばった俺に、ご褒美を。そうだな、チェリーパイが食べたい」
「お安い御用ですが、どうして……」
ただし、と涼真は条件を付けた。
「今度の休日、日中に。俺のことだけを考えて作ってよ」
頬を染めた瑞に、慌てて補足を加えた。
「いや、その! 変な意味じゃなくって! ストレス発散じゃないお菓子作り、ってこと!」
「あ……」
言われて初めて、気が付いた。
僕は、お菓子作りが大好きだったはず。
それが、いつからストレスのはけ口になってしまったんだろう。
「解りました」
それだけ言うのが、精いっぱいだった。
涼真の笑顔が、まぶしかった。
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