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第三章・10

「う、うぅ……。あ、ぅ、はぁぅ……」  体内の稀一は衰えを知らず、その質量を保ったままだ。  まさか、もう一度……。 「今夜はこれで勘弁してやる」  ずるり、と稀一が蒼生の内から去った。 「これで蒼生は、俺の物だ」 「は、い……」  物だなんて、あまりいい表現じゃないな、とかすかに感じたが、朦朧としていた蒼生は、素直にいい返事をよこしていた。  僕は、若宮さんの物になったんだ。  そう考えると、幸福感さえ覚えた。  こうして、恋人同士になったその日のうちに、二人は身も心も結ばれた。

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