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第三章・11

 稀一は、裕福な家庭に恵まれていた。  大学3年生の途中で海外に1年間留学し、帰国しても就活はせず大学院へ進んだ。  経済的に何ら心配することはないので、ただ心の赴くままに生きていた。  そんなある日、テニスのサークルで蒼生と出会った。  華奢な体からのリターンは、驚くほど鋭い。  甘い顔つきをしていながら、どこまでもボールを追う負けん気。  稀一は、蒼生といつまでもこうしてラリーを楽しんでいたい、と思った。  そんな風に感じる人間に、初めて出会った。

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