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第三章・12

 蒼生は、平凡な家庭に生まれ育った。  いい意味で、平凡。  華やかな贅沢はないけれど、絶望する恐慌もない家庭。  両親は真面目に蒼生を育ててくれたし、大学にまで行かせてくれた。  中学、高校とテニスをしていたので、大学でもテニスのサークルに入った。  そこで、噂の稀一と対戦した。  渾身のサーブを、容易く返してくる余裕。  前に落とすと見せかけて、ラインぎりぎりを攻める遊び心。 (若宮さんって、ホントに何でもできるんだな)  お金持ち、イケメン、成績優秀、モデル体型、スポーツマン……。  そんな風に、蒼生は稀一を思った。  そして、他の大勢の人間が感じるように、稀一に想いを寄せるようになった。

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