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なみだのうみで、おぼれるきみ。

 大好きな彼が恋人にフラレたと知った時、俺はどんな顔をしていたんだろう。  笑ってなんかいなかった――そう、思いたい。 「泣いてもいいんだよ?」  冬の冷たい空気の中、震える君を抱きしめる。  いつも強気な君が流す涙は重く、美しい。  好きだった。  愛してた。  君の本音が零れるたびに、心が痛くてたまらない。  それでも、今君がしがみついているのが俺の背中だという事実が嬉しいだなんて、ただ泣くのに必死な君は気づきもしないんだ。  あんな男、忘れてしまえ。  俺のものになれ。  俺だけを見ていればいい。  言葉にできない思いが、白い塊になって溢れては消えていく。  俺には言えない。  君がほしい――だなんて。  君の不幸を喜んでしまった俺には、告げる資格なんてない。 「大丈夫だよ、純太。全部、分かってる」  暴れ出しそうになる激情を心の奥に仕舞い込み、 「分かってるから」  俺は、ただ君を抱きしめる。 【Side 俺】

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